2015年 02月 27日
カンヌの風 |
時折雪が激しく舞う、寒い一日でした。 庭から摘んできたクリスマスローズも、室内でほっとひと息ついているように見えました。
ガラス器の下に抽き出しの奥から出てきた、フランス製のクロスを敷いてみました。
まったりとした白い布地には、花や鳥や蝶が織り込まれており、光の具合でとても立体的に見えます。 グレイがかったベージュの縁取りが上品で、選んだ品でした。
2007年5月のカンヌは、まばゆい太陽がふんだんに降り注ぎ、毎日が明るく輝いていました。 思いもよらない仕事で滞在することになり、二週間もの間忙しく過ごしていた私は、少しの時間をみてショッピングしたり、食事をしたりするのを愉しみにしていました。 とはいえ、カンヌは知る人ぞ知る高級リゾート地ですし、その頃はユーロがとても強くて物価も倍増の感がありました。
ブランド品には興味はありませんが、その他のいろんなものも高く感じられて、手が届かないと思うものがたくさんあったのです。
そんな中で、ずらりと並んだ南仏らしいお店の一角に、素敵な布物を扱うお店がありました。 色とりどりの美しい布をお土産に買い求めたあと、自分用に手にしたのがこのクロスだったのです。 お客様や生徒さんを迎えるテーブルの上に置いて、花を飾り、お土産話に花を咲かせようと思いついていました。
ところが、帰国後も忙しくしていて、すっかりそのことを忘れていたのです。
今日、抽き出しを整理していますと、奥の方からきれいに畳まれたままこれが出てきたという訳です。 迷わずアイロンをかけて、テーブルの上に置きました。
しっとりとした質感のある白いクロスは、明るさを呼び、寒の戻りの寒い日にぬくもりすら与えてくれたのです。 長く忘れた存在だったことが悔やまれました。
昨日に続いて、午後の時間にアイロンがけに励みました。 クロス、エプロン、プレースマットなど、料理教室の準備も怠りなくです。
時間も忘れてアイロンがけをしながら、想いはあの日のカンヌへ飛んでいきました。
ご縁があって映画のスタッフとなった私は、カンヌ国際映画祭に招待された監督とともに、渡仏したのでした。 パーティーや取材や公式上映会という、めくるめく経験をして、晴れのレッドカーペットまで歩くことが出来たのですから、今となっては夢のようです。 それは、誰もが経験出来るものではないからです。 その監督とは、もちろん河瀬直美さんです。
一枚のクロスから、カンヌの風を感じた一日でした。
by galleryfabrile
| 2015-02-27 22:23
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